natura

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「ナトゥーラ」


混沌とした時間(とき)を持つ空間(そら)に音を描く

日時:2018年4月10日(火)、11日(水)、12日(木)
場所:愛知県立芸術大学芸術資料館

展示作品について

第一章

「透明だった時間(とき)を回顧するための譚詩曲(うた)」
環境省レッドリストを使用した、多チャンネル音響インスタレーション

 先日、知り合いの娘さんが、「近所の川で、カワウソを見ました。」と言った。耳を疑う事無く、「それは、ヌートリアでは無いの?」、と答えた。

 が、本当に、カワウソであったのかも知れない。
 きっと、そうだ・・・
 きっと・・・
 日本カワウソであって欲しい。

 ごく初期において、この作品のイメージは、ハイブリッドな生物であったのだが、近年、現代華道作品を見る機会が多かった事も有り、少々、華道的な思いも何処かにあるのかも知れない。
 レッドデータブックに載ってしまった生物達の名前を、コンピュータが読み上げる方法で制作しているが、人と人以外の生物達との関係性を考えるための作品なのかも知れない。

第二章

「宇宙(そら)より来たる微細(ちいさ)な者達への賛歌(うた)」

スーパーカミオカンデで捕捉したニュートリノのデータを可聴化した作品

 一昨年、名古屋市科学館で開催されたコンサートの際、可聴化した音源を利用しつつ、地球上のみならず、宇宙も含めて、もう少し大きな自然との関係性を見つめてみようと言う観点から制作した。

 テープを巻いたキューブは、舞台作品を上演した際に、地球を投影するために考えたもので、今回も、藤田君が中心になってオブジェクトの制作をしてくれた。

 映像は、デザインの関口先生に、カミオカンデのデータから制作していただいたものです。

第三章

「生物に憧憬(あこがれ)の念を抱く者達の騒がしき舞曲(うた)」
機械式音具楽団による、株価チャートを活用した楽曲の演奏

 最近、「AI」と言う文字を見掛けない日が無い程に、世の中、AIが社会の様々な領域に入り込んでいる。
 「ビッグデータ」も、そうで、「ビッグデータ」の解析が出来るのは、AIであって、けっして、人では無いのである。
 辛うじて、AIが吐き出した結果を参考にさせて貰っているのが人で、ひょっとして、AIの仲間内では、愚かな人々の事を、AI言葉なる方言で、語り合っているのかも知れない。

 そうした、人が育んで来た社会と言うものが、自然の産物として「自然」なのであるのか・・・

 ドラム缶は、化石燃料の象徴として使用しているが、瀬戸芸の開会式でも使用したものである。

第四章

「暖かい空間(そら)に白い虫が舞う時間(とき)を想う牧歌(うた)」
2017年の日本各地の気象データを可聴化したハイブリッド・アート

 「地球温暖化」と言う言葉も、随分、軽くなってしまった印象があるのは、私だけであろうか。
 「アメリカ・ファースト」に象徴されるように、今、人は、生きる事に精一杯なのかも知れない。

 ただ、少しは、人のみならず、様々な生物、物、・・・、森羅万象に耳を傾けても良いのかも知れない。

 昨年、一年間の、那覇から札幌まで、8都市の気象データを可聴化し、気温に付いてはLEDを使用して温度計のように作ってみた。
 使用した映像は各地で撮影したものを、Processingでプログラミングして編集し、後半では風力発電のプロペラが、まるで雪のように降って来るイメージに仕上げてみた。

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技術情報

第一章

多チャンネル

 多くのスピーカーとイヤホンを使用している。多チャンネルのオーディオインターフェイスから手作りのアンプに送り、空間的な音響を目指した。

 読み上げは、バッチファイルを組んで、音声合成の中でも、多分、今、最も有名であろうKyokoさんに読み上げて貰っている。

 サウンドは、極めてチャンネル数が多いため、多少ホワイト・ノイズのようにも聴こえるが、絶滅危惧種の名前を叫んでいるのが分かる事と思います。

 制作の段階で、Mac miniが立ち上がらなくなり、星型のドライバでゴニョゴニョしていた事もあったのだが、何とか動いている。
 この作品の制作で、最も楽しかったのは、流木を削ったり磨いたりしている時だったのかも知れない。

第二章

ナノセカンド
音波として認識出来ない程の短い波

 ニュートリノのイベントは、ナノ秒単位の出来事で、とても、音波として聞こえる筈も無い。それを、とんでもなくスローにして可聴化したものである。
 実際には、カミオカンデの増倍管が捉えたエネルギーと位置情報のデータを音化するのであるが、制作上では、普段使用しないような膨大な音数に悩まされつつ、データとの齟齬が無いように仕上げた。

 音響は、8チャンネルのマルチで、Max上でマウスを使って音の定位を変化させるPatchを組んで仕上げた。
 今回の展覧会の全てのコンピュータがそうであるように、映像と音声はネットワークにより同期させている。

第三章

機械式音具
物理的に物体を振動させて音を出す。

 基本的には、照明用の機材やDMXと言う規格を利用して、全体をコントロールしているが、一般的に我々が使用出来る照明用の機材では、速い動きが出来ないので、パソコンからの照明機材コントロールには、Arduinoを利用している。

 ただ、Arduinoのシリアル用ポートのメモリが余りにも小さいために、ヘッダを変更して使用せざるをえなかった。
 実際に音楽を演奏するのは、Maxで組んだPatchで、Arduinoに対して、Serialでデータを送ってソレノイドを動かしている。

 4個のドラム缶を縦に積むアイディアは、瀬戸芸の開会式の際に思い付いたのだが、実際に、自分で単管を使って組んでみると中々綺麗に立たない。
 コンサートでは、1個のドラム缶で何度か作品上演した事もあるのだが、構造体が大きくなると、甘い精度で作らざるを得なくなる。
 今回は、彫刻の神田先生が中心となり、彫刻や作曲の学生諸君も手伝ってくれたので、見ていても、気持ち良い程の出来栄えで、感謝感謝・・・

第四章

温暖化
今、地球が暑くなっていると言う。

 映像と音楽が中心となる、メディア系の作品で、コンピュータは、音と映像用のパソコンと、2台の映像用パソコンでドライブしている。
 ただ、実際の製作上で困ったのは、2台のパソコンのスペックが余りにも低かったため、Maxで組んだPatchでは、Full HDの映像が動かず、たまらず、メディアプレーヤーをTelnet上からコントロールする方法を選んだ。
 コードは、最近よく利用しているProcessingを使って書き、LEDはArduino(C言語)で組んだが、nanoのデータ領域が小さいので、気象データはフラッシュメモリ側に入れて使用している。。

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インフォメーション

作家について

基本は作曲家
様々な表現活動を行っている。

 次回の、「混沌とした時間(とき)を持つ空間(そら)に音を描く」まで、今しばらくお待ちください。

その他の作品について

作品
様々な表現による作品を創作している。

 次回の、「混沌とした時間(とき)を持つ空間(そら)に音を描く」まで、今しばらくお待ちください。

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